活用事例

株式会社テレビ朝日様
リモートプロダクションシステム

JPEG XSとFA-1616で実現した国際大会のリモート中継

株式会社 テレビ朝日 技術局
左:設備センター  近藤 佑輔氏
右:技術運用センター 竹内 達史氏

マルチチャンネルプロセッサーFA-1616を中核としたリモートプロダクションシステムをシンガポールで開催されたスポーツイベントにて初運用。高画質・低遅延伝送を可能にするJPEG XS技術と、FA-1616のPTP同期・遅延吸収機能を組み合わせたST 2110による長距離中継システムの本格稼働がスタートしました。

各現場での知見集めからスタートしたIP化への歩み

テレビ朝日様では2021年頃から、IP化に関する取り組みを始めていました。まだ当時は各セクションの担当者が知見を個別に集めていた段階だったと同社技術局 設備センターの近藤 佑輔氏は、振り返ります。

近藤氏:「私はCGセクションに在籍していましたが、各ベンダーの方々と意見交換しながらどう進めるべきか検討していました。」

別セクションに在籍されていた同社技術局 技術運用センターの竹内 達史氏は、海外中継での経験からIP化の必要性を感じたと話します。

竹内氏:「2022年の大規模スポーツイベントの際、各国のST 2110による大規模システムを見たことがきっかけで、ST 2110を用いたリモートプロダクションの実現に向けて検討し始めました。中でも、高画質・低遅延な映像伝送を1Gbps回線で実現し、回線手配コストの削減にも貢献するJPEG XS技術に、大きな可能性を感じました。」

選定の決め手は拡張性と汎用性の両立

FA-1616のJPEG XS設定用GUI

2022年にFA-1616を含む検証用設備の予算申請がなされた後、IP化に関する勉強会が発足し、技術局内の各セクションからメンバーが集結しました。FA-1616を選定した理由について、近藤氏はこう語ります。

近藤氏:「機器検討時にはまだ具体的な方針が定まっておらず、私としてもSDI/IPのゲートウェイを探していたところにFA-1616の販売が開始されました。以前からFA-1010などの朋栄製ビデオプロセッシング機器には信頼を置いていたので、新製品にも関心がありました。FA-1616はソフトウェアベースで機能を自由に追加でき、IP対応機能と従来のSDI運用機能を切り替えながら使えるため、既存環境でも活用しやすく、将来の拡張にも対応できる点が魅力でした。」

竹内氏:「後にJPEG XSを使ったリモートプロダクションの構想が具体化したタイミングでFA-1616のJPEG XS対応機能を追加発注しました。」

初運用での成果。5,000キロの物理伝搬遅延を吸収

シンガポールで開催されたスポーツイベントにて 初運用されたリモートプロダクションシステム

実際の導入後は、長期にわたり綿密な検証を実施。朋栄とも連携しながらの細部の調整や伝送テストなどを重ね、今夏シンガポールで開催されたスポーツイベントでの初運用へとつながりました。

竹内氏:「日本とシンガポールの距離は約5,000kmあり、約40ミリ秒の物理的な伝送遅延が発生します。今回衛星測位システムから受信した時刻情報を元に生成したPTPを使用し、FA-1616によって約40ミリ秒の遅延も吸収できたことは大きな成果でした。40ミリ秒の遅延が発生する回線環境においてST 2110を用いた長距離伝送が実現できるか不安もありましたが、FA-1616に搭載されたST 2022-7のヒットレスバッファー機能の活用により、伝搬遅延だけでなくIPパケットのジッターも吸収でき、ST 2110のストリームを拠点間で安定伝送できました。今後PTPに障害が発生した場合に備えて、一時的に同期を無視してST 2110ストリームの伝送を継続できる仕組みを実装していただいたので、さらに運用の幅が広がると思います。」

近藤氏:「FA-1616 の内部で、JPEG XSコーデックの設定をエンコーダーとデコーダーで切り替えて自由に割り当てられたことが便利でした。現場ではエンコーダーを多く、局側ではデコーダーを多く使うといった構成変更を柔軟に行えるのは大きな利点でした。」

幅広い現場での本格運用を加速

竹内氏:「弊社では新たなIPリモートプロダクションの運用を検討する場合、機材構成やネットワーク設定などを自分たちで設計・構築して対応を行っています。その分、知識の習得や人材育成に時間がかかりますが、少しずつノウハウを蓄積していきたいです

「今はラーニングカーブの途中の段階」と話されていた竹内氏。テレビ朝日様は今後も本システムの運用実績を積み重ねながら、新たな中継体制の確立を目指していくとのことです。

  • ご協力いただいた皆様の部署名、お役職は、インタビュー当時のものです。(2025年10月)

納入システム 主な機材

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