朋栄製品技術 基本解説:8K(SHV) / 4K(UHD)

次世代映像に必要な要素

次世代放送への取り組みとは別に、映画コンテンツへの応用や、CG(Computer Graphics)や、VR(Virtual Reality)、AR(Augumented Reality)、MR(Mixed Reality)などを活用した医療、セキュリティ、教育などの分野で、新たな映像表現への取り組みが加速してきています。今回の次世代映像への移行は、SDからHDへ解像度が移行した時期とは異なり、(1) 解像度、(2) フレームレート、(3) 色域、(4) ダイナミックレンジという各要素の標準規格が移行することも特徴です。「より自然な、見た目に近い映像表現が可能になる」と簡単に表現されていますが、実はこれらの要素をしっかりバランスさせて表現していくことが不可欠になっていきます。

ここで、各要素の標準が変わることで、何が変わっていくのかを整理しておきましょう。

1. 高解像度化

フルHDの画像数は水平1920 x 垂直1080画素ですが、UHD解像度は水平・垂直それぞれ2倍の3840 x 2160画素、8K解像度は水平・垂直それぞれ4倍の7680 x 4320画素となります。ちなみにDCIのフル4K解像度は4096 x 2160画素です。高解像度化により、映像を大画面で表示した時でも、ドット感のない滑らかな映像表示が可能になります。
視力1.0の人が画面の画素を意識しないで視聴できる距離を最低視聴距離と言い、テレビ視聴の最適な距離を表します。この最低視聴距離は、フルHDの場合は画面の縦の長さの3倍ほどの距離が必要とされてきました。この距離の場合、画面横サイズは視野角33度ほどになります。UHD解像度では水平・垂直2倍の解像度がありますから、最低視聴距離は画面の縦の長さの1.5倍となり、このときの画面横サイズは視野角66度となります。8K解像度はさらに水平・垂直2倍の解像度ですから、最低視聴距離は画面の縦の長さの0.75倍、画面横サイズは視野角132度となります。この8K解像度の最適視聴距離は、人間の眼の視野角いっぱいになるところに画面を配置することになり、それでも画素が見えないということになります。

2. 高フレームレート化

次世代放送はインタレースを廃止し、すべてプログレッシブにするとともに、フルスペックの場合でハイフレームレート120pも規定されています。フレーム表示方式がプログレッシブに変更になったことで、走査線ノイズがなくなり、1フレームの解像感も向上します。フレームレートを増やすことにより、速い動きに対してもブレが少なく、動きの滑らかな映像表現が可能になります。高解像度化の恩恵を受けながら、滑らかな動きを表現することが可能になります。

3. 広色域化

従来の色域に比べ、より広い色範囲を表現できるようにすることで、人間が認識できる色の範囲に近づけることが可能になります。従来の色域では同じ色にしか表現できなかった部分にも、微妙な色の変化が異なる色と判別できるようになります。ハイダイナミックレンジの機能と併用することで、シャドウ部分やハイライト部分にも淡い色表現が可能になります。現行の色域ITU-R BT.709では自然界に存在する色の約75%までしか表現できませんが、次世代放送で採用されたITU-R BT.2020では約99.9%までの色再現が可能です。

4. ハイダイナミックレンジ化

イメージセンサが撮影できる暗部から明部までの階調差、あるいはディスプレイで表現できる黒から白までの輝度差をダイナミックレンジと言います。ハイダイナミックレンジ(HDR)化することで、黒潰れしそうな暗部や、白飛びしそうなハイライト部分での階調表現が可能になり、光量差のあるシーンにおいても見た目に近いイメージを得ることが可能になります。
ITU-R BT.2020の規格にはHDRは規定されていなかったため、ITU-RはHDR規格に関して国際標準規格化を進めています。現状では、各社が独自にHDRを追加することで表現の幅を拡げている状況にありますが、近い将来にITU-R勧告が出されることになりそうです。本来の色彩表現は、ダイナミックレンジと色域は連携したものであり、カラースペースの範囲に輝度を加えたカラーボリュームとして扱う必要があります。

こうした各要素の移行による高画質化に加え、演算処理における量子化(ビット深度)の高ビット化も図られます。ビット深度とは、演算処理において何段階の階調を表現できるかをビット数で表したもの。これまでのHD放送では、表示部分の階調は8bit256段階で、内部信号処理は8bitまたは10bitで行われてきました。表示色は長年、RGB各色256段階の組み合わせである約1,677万色を24bitフルカラーとして扱ってきました。次世代放送においては、表示10bit1024段階、内部信号処理は10bitまたは12bitで処理が行われていくことになります。RGB各色1024段階になると、表示可能な色数は約10億7,374万色の30bitカラー表現が可能になります。より高いビット数で処理することにより、より淡い色や階調の違いも表現可能になり、演算処理における誤差から生じる階調飛びを少なくすることが可能になります。

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